@取材日記 第9回赤羽セミナー③ 相続問題 ~税金以外にも知っておきたいアレコレ~
くらしの相談会~年代別に終活について考えよう~」をテーマに開催された第9回赤羽セミナー&無料個別相談会で、赤羽の身近な専門家たちの話から、「くらしに関わる課題解決のヒント」をご紹介する3回目です。
ー登壇者ー
ファシリテーター:
税理士法人西川会計 西川豪康氏
パネラー:
司法書士法人赤羽法務事務所 春日順子氏
税理士法人西川会計 小林仁氏
赤羽法律事務所 金沢裕幸氏
株式会社相栄商事 西野泰彦氏
―不動産相続後の名義変更をしていなかった どうすればいい?―
お父さん、お母さん、お子さんが一緒に住んでいて、お父さんが他界し、お母さんが他界し、そのままお子さんが住んでいるが、登記は変えていないケースがとても多いです。
おじいちゃんの家に住んでいるというケースも多いですね。
登記をしていなくても、住むことには何ら問題なくできてしまうので、そのような事案は多いです。
回答:春日順子氏
―誰かに怒られたりしないのですか―
来年令和6年4月1日から登記が義務化されます。
今まではなんの罰則もないので、登記を急ぐ必要はなかったのですが、法律が改正されました。
令和6年4月1日からは、登記が義務化され、原則、正当な理由なく相続の発生から3年以内に登記をしないと、10万円以下の罰金が科せられます。
正当な理由とはなにかは、これから運用されていくと具体例が出てくるものと思われますが、例えば「今、遺産分割協議中です。まもなく合意できる予定です。」とか、「所在不明、行方不明の相続人がいて対応策を考えています。」などが考えられます。
そういう方は救済方法がありますので、「相続人申告制度」(この物件は相続が発生していますと届出をする)で一応、過料は免れます。何もしないのはだめです。
回答:春日順子氏
―来年の4月1日以降に亡くなった所からになりますか―
既に発生しているものも該当します。この法律制度の趣旨は、所在者が誰なのかわからない土地が日本にはいっぱいあるので、それを無くそうというものです。
そのため、既に発生している相続についても、令和6年4月1日を拠点としてそこから3年間ということになります。
回答:春日順子氏
―赤羽には結構古い家もありますが、こういった問題もありますか―
空家がいっぱいあって、そういう問題も発生しています。
甥っ子姪っ子さんは、自分が相続したこと自体知らないということもあります。
5年以上も委任状が取れなくて、売買が決まっているのに決済が5年以上延びているような案件が何件もあります。国が考えるべきだと思いますね。
回答:西野泰彦氏
―相続したことすら知らないということがあり得るのでしょうか―
かなり古い時期からずっと委任をしていないという相談も多いです。
私が扱った事例で、明治時代くらいに亡くなった方の相続の件で、なんとかしたいと相談がありました。調べてみると関係者が50人くらいになっていて、全員と連絡を取らなければなりません。皆さん、遠い親戚で全く面識がない状況で、ひとりひとりに順序だてて説明して協力をお願いしました。大体は応じてくれましたが、連絡がなかなかつかない方もいました。全員の同意がないと、手続きを取れないので、連絡が取れない方は最終的に行方不明としました。
回答:金沢裕幸氏
―なんで、こんなに先送りするのでしょう―
親族間で相続のような話を持ちかけるのが、日本人は苦手なのか、権利意識が低いのかどうでしょう。あまり話したくないのであれば、「遺産分割調停」をお勧めしたいです。
家庭裁判所は3年で解決を目指しています。あまり揉めるようなら、迷わず家庭裁判所に持ち掛けて、調停員が詳しく話を聞いてくれて、当事者間の調整をしてくれます。費用は低廉の価格です。
回答:春日順子氏
―相続の割合とか、話し合いたくないということが多い?―
亡くなった時の備えが必要ですね。遺言書を作成して、家族の中で争いが起きないようにあらかじめ措置をとるのがよいと思います。
家族の中で、亡くなった方を介護していた方とそうでない方で不公平にならないように、あらかじめ遺言書を書いておいて、公平性を保つことがトラブルを避ける方法になると思います。
回答:金沢裕幸氏
―遺言書に書いて欲しいこと―
例えば、家があるけれど預貯金は少ない、子どもは二人いるという状況の場合、不動産は半分に切ることはできないので、どちらかに相続させるとするとトラブルになりますよね。そういう時は、遺言書を書いて揉めないようにしていただきたいですね。
回答:春日順子氏
―相続が分割されていないと、税の立場からデメリットはありますか―
相続税は、遺産分割が決まっていようが決まっていまいが10カ月以内に払わなければなりません。遺産分けが決まっていなくても法定相続分で財産を相続したものとみなし、つまりもらっていないけれど取得したものとみなして相続税を計算して納付してもらうことになります。
この時に注意したいことは、小規模宅地などの特例とか、配偶者に税額軽減といった相続税を減らす特例があるということです。
10か月以内に相続税を払うという税金の観点からいうと、その間に遺産分割を終わらせて、税金を払うのが一番お得になります。
回答:小林仁氏
―小規模宅地の特例とは?―
例えば、亡くなったお父さんが住んでいた家を同居人が相続するとか、妻が相続するとかいう場合に、住んでいる所にまでたくさん税金をかけるのは可哀そうということで、土地の評価を下げてあげるというものです。面積の制限はありますが、8割評価を引いてくれるため、
相続税に大きな影響があります。これが使えないと、ほぼゼロになるようなものなのに、税金を払わなければならないといったことがあり得ますので、遺産分割の時は遺言書をそろえていただくのがよいと思います。
回答:小林仁氏