#04 結婚すると何が変わるの?(全4回)
第2回「戸籍は立場を守ってくれる」
「結婚」に関係する制度上の手続きについて調べるうえで、戸籍について取材しています。
夫婦別姓や離婚についてなど、司法書士法人赤羽法律事務所 代表社員認定司法書士 春日順子先生、認定司法書士 松尾昭史先生へのインタビューです。
入籍とは、親の戸籍から抜けて二人で新しい戸籍を作る手続きだとわかりました。
松尾昭史先生(左)
春日順子先生(右)
夫婦別姓(選択的夫婦別氏制度)について教えてください ―――
●松尾先生
今の法律では、夫の氏を称するか、妻の氏を称するか、戸籍はどちらかの姓を選ばなければなりません。
●春日先生
現在は、別姓は正式にはできないですね。ただ仕事をするうえで、女性が旧姓を使用することはいいと思いますよ。
まだ日本では「家」という捉え方をしているから、別姓は正式には認められていません。
しかし、議論が活発になってきているので、今後は夫婦別姓が認められる可能性もあるかもしれないですね。
今のところはどちらかの姓を名乗りますが、妻が旧姓ですごく活躍していて、その名前をずっと仕事で使いたいのであれば、旧姓のまま名刺を出してもいいと思います。
司法書士の登録など国家資格とかは旧姓使用が認められているものもあるようです。司法書士は旧姓での登録・使用が可能です。旧姓登録が認められない場合でも、名刺に使う分には問題ないです。
結婚して新戸籍ができますが、離婚する時はどうなるのですか ―――
●春日先生
離婚するときは、妻が夫の戸籍から出て、また別の戸籍を作ります。
親の戸籍に戻ることもできるし、自分で新戸籍を作ることもできます。
― 自分だけの戸籍を作れるのですね ―
●松尾先生
1人だけの戸籍をよくみますよ。
●春日先生
離婚しているのにいつまでも同じ戸籍に入っているのはあり得ないので、別戸籍を作ります。
離婚すると原則は旧姓に戻ります。
でも婚姻時の姓で生活していた時間が長いから、その姓を名乗りたいという場合は、離婚届と一緒に私は婚姻時使用していた氏を名乗りたいですという届けを3ヶ月以内に出します。届けを出せば名乗ることはできますが、戸籍は別になります。
日本は、氏について厳しいです。届けを出せば離婚した後も婚姻時に使用した姓を名乗ることができますが、届けなかった場合は自動的に旧姓に戻ります。
それは自分で申請しなければならないのですね。戸籍についてわからないことがあったら誰に聞けばいいのでしょう ―――
●松尾先生
要件もよりますが、役所の戸籍係、あるいは司法書士ですね。
大体は相続関係が多いです。お父さんが亡くなったので、お父さん名義の家の登記を誰々の名義にしたいというご相談が多いですね。
そういうときに関係者の戸籍を集めて、家の相続人は誰かというのを調べたりします。
戸籍を集めることができるのは本人だけですか? ―――
●春日先生
そうですね。あとは弁護士さん、行政書士さん、税理士さんなど特定の業種の人たちです。私たちもそうですが、依頼を受けて、それが職務の範囲内であれば職権で取ることができます。
単なる興味本位ではダメですよ。よく、お金を貸した人が逃げちゃったから戸籍を取ってくれと言われるのですが、それは絶対ダメ。人探しはできません。
私たちは登記の手続きの依頼を受けるなど、職務の範囲であれば戸籍を取ることができるのです。
●松尾先生
戸籍はプライバシーに関することなので厳しくなっています。
自分の範囲の戸籍も、個人では自分の分は取れますけど、お父さん、おじいちゃんなどの分は取れないと思います。
戸籍に入らないことのデメリットはありますか ―――
●春日先生
戸籍はとても重要なシステムです。
入籍しないで結婚しようという人もいると思いますが、扶養の問題とか、税金の問題とか、専業主婦は年金を夫が納めていますという届出がありますが、戸籍に入らないとそういう立場に立てないので、結婚したら戸籍に入った方がいいと思いますね。
妻として受けられる権利があるのだから、新戸籍編製した方がいいと思います。
●松尾先生
何が困るかというと、亡くなったときの相続の問題があります。
戸籍に入っていないと相続人ではないため、全く疎遠になっていた家族が相続人になって財産がそちらにいってしまいます。
●春日先生
同性婚の人たちはそこが切ないのよね。遺言書を書いておくことはできるけど、やっぱりパートナーと一緒に築いた財産を受け取れないというのは切ないのだと思いますね。医療に関する同意権もありません。いずれ認められる時代が来るのかもしれないですが。
戸籍は立場とか、いろんなものを守ってくれます。
戸籍は自分の立場、権利を守ってくれる大切なものなのですね。自分だけの戸籍を作ることができること、結婚しても籍を入れないことのデメリットがあることもわかりました。
次回は、結婚と年金や税金の関係についてのインタビューになります。
次回取材日記 結婚すると何が変わるの?第3回「年金について」は3月の掲載を予定しています。
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ー 協力 ー 司法書士法人 赤羽法務事務所 春日 順子 先生 |