#04 結婚すると何が変わるの?(全4回)
第3回「年金、社会保険でメリット」
「結婚」に関係する制度上の手続きについての取材、続いては年金と健康保険について、社会保険労務士法人らいふ社労士事務所の福島継志先生にインタビューしてきました。
福島継志先生
結婚前と結婚後で、年金で変わることはありますか ―――
●福島先生
学生さんの場合、今は第一号被保険者というところに属しています。結婚すると、その方の収入によっては「扶養」というものになり、第三号被保険者というところに属することになります。これは年金保険料を一切払わなくてよくなります。年金を払わなくても、払っているのと同じこととして見てもらえるので、年金を払っている人と同じ金額をもらえることになります。優遇されるということですね。
保険料を払わなくても、払っている人と同じ待遇を受けられるのはなぜですか ―――
●福島先生
昔からの名残があるのだと思います。昔は女性の方が専業主婦として家を守ることが多かったので、収入がない。でも年金を納めないとならない。将来もらえる年金が減ってしまうのは可哀そうなので扶養に入っている方に関しては、同じように年金がもらえるようにするという制度です。
今は働く人が多いので、「なぜ」と思う人も多いでしょう。その辺については、法改正があるのではないかと言われているところではあります。
昔からの名残なのですね ―――
●福島先生
私の世代では、二十歳で結婚してずっと専業主婦をされてきた方の場合、一円も年金を払わなくても年金をもらえるという人もいます。
今の日本の年金がそうなのですが、それはおかしいのではないかという声が実際増えていますね。
入籍すると同時に、年金のシステムも移行されるのですか?それとも自分で手続きをするのですか ―――
●福島先生
扶養に入る手続きをします。年金だけでなく、健康保険証も同様に扶養に入る手続きをすると、違う保険証が届くことになります。それと同時に年金も第一号から第三号に変える手続きを行います。手続きをしないと、永遠に第一号のまま払い続けることになります。
自発的に手続きをしないといけないのですね。第一号、第三号ということは、第二号もあるのですか ―――
●福島先生
会社にお勤めされている方は第二号被保険者になります。一般的には厚生年金に加入すると、第二号被保険者になります。
第一号は学生のほかにどのような方が属しますか ―――
●福島先生
学生さん、自営業の方、あとは社会保険に入っていない会社にお勤めの方もいらっしゃいますので、その方たちは第二号被保険者になりたくてもなれません。結果、第一号で居続けるしかないということです。
扶養に入らない場合について教えてください ―――
●福島先生
社会保険でいうと、扶養に入っていなければ、それぞれが健康保険料を負担します。ある程度の収入にならない方は扶養に入ることができます。扶養に入ると、健康保険組合とか健康保険協会などいろいろな保険があります。
一般的な説明をいたしますと、健康保険協会では何人扶養がいても保険料は変わらないため、妻の保険料、夫が支払う保険料が変わらないというメリットがあります。
年金に関しても、先ほどご説明したように扶養に入ると第三号被保険者になれます。
結婚前に同棲しているだけであれば、それぞれが年金を払うことになりますが、結婚した段階で扶養に入れば、入った方の保険料はかからないので、金額に関してのメリットがあります。
それは男性、女性が逆でも同様ですか ―――
●福島先生
逆でも大丈夫です。扶養に入るには年収についての要件があります。社会保険の扶養は、年収130万円未満。60歳以上の方だとまた変わってきます。60歳未満の方だと、年収が130万円を越えるかどうかで判断します。
その判断の仕方が面白くて、生涯に渡って稼ぐかどうか、つまり向こう一年間の年収が130万円越えるかという判断基準でみるので、1か月10万8千円くらいを越えるどうかで判断ることになります。
年金をもらう側になった時に、結婚しているかどうかで変わるとはありますか ―――
●福島先生
年金をもらえる制度は3パターンあります。一番ポピュラーなのは、老齢年金で、ある年齢を越えるともらえるもので、よく皆さんが「年金」とおっしゃっているものです。その年金をもらえる時に、配偶者がいらっしゃって、その方が結構若い方だと加給年金と言ってプラスしてもらえる制度があります。
独身の方だとプラスがありません。
それから遺族年金ですが、その方が亡くなった時に配偶者の方がもらえるものなので、その方が結婚していなければ誰ももらえません。
配偶者が第一優先順位なので、遺族年金に関しては結婚しているか、していないかでだいぶ変わってきます。
離婚時の分割という制度がありまして、厚生年金の方だと結婚している期間で、権利を持っている金額、将来もらえる年金が違います。
旦那さんはお仕事に行っています、奥さんは家を守っています、これを将来もらえる年金が旦那さんだけ多くもらえるのは、おかしくないですか?奥さんは自宅を守っているので、そうした見方から考えると、結婚している期間の厚生年金は二人のものです。
だから離婚した場合は、分割しますという制度ができました。
妻が「私だって家を守っていた」と言ったら、夫が働いていた分の年金をもらえるということになり、そういった面で将来不安だから離婚できないという人もいたので、この制度ができたことで離婚が増えたという話もあります。
離婚した時に、年金で必要な手続はありますか ―――
●福島先生
扶養から外れるという手続きをするだけです。3号の被保険者の人だったら1号になって、自分から外れることができます。結婚の時と逆の手順になります。
そうした申請などの手続はどこに行けばいいですか ―――
●福島先生
年金事務所になりますが、すごく混んでいます。予約なしで行くと、3時間待ちとかディズニーランド並みです。予約して行っても1か月2か月待ちですね。
年金のルールは昔の名残がある印象を受けましたが、今後、変わるようなことはあると思われますか。共働きが増えていますが、控除の枠が拡大されるとか、逆になくなるとか ―――
●福島先生
扶養の方は保険料がかからないと言いましたが、かかってくる可能性はあります。
国にお金がないので、なるべく払ってもらおうということがあると思います。
年金が払えない状況になった時に、結婚していると、払える方が代わりに払ってあげるのは大丈夫ですか ―――
●福島先生
扶養に入っていれば、そもそも払わないので代わりに払うのがだめということはないです。
皆さんの困りごとをお寄せください。
一緒に快適な人生を手にしていきましょう。
ー 協力 ー 社会保険労務士法人 らいふ社労士事務所 福島 継志 先生 |